井坂 光宏
酪農学園大学 獣医学類長
伴侶動物外科ユニット 教授
アジア獣医内科(循環器)設立専門医



15周年の感謝を込めて──。
QIX EXPOは大盛況のうちに
幕を閉じました。
ご来場いただいた皆さま、
誠にありがとうございました。
ステージでは、これまでの軌跡を振り返りつつ、
新たな未来構想の提示やリブランディングに込めた想いを発信しました。
専門家同士による未来志向のセッションでは、多くの学びと気づきが共有され、
業界のこれからを見据える貴重な場に。
愛犬・愛猫との未来を共に描く、感動と充実にあふれたステージとなりました。
オープニングスピーチ
生田目 康道(株式会社QIX)



QIX 代表取締役社長・生田目による開会のスピーチでは、自身の原点や経営の学び、愛犬との別れから生まれた「仕組みで社会を変える」という決意が語られました。動物病院開院からQIX 創業、15年の歩みを振り返りつつ、新たに挑むフード事業「Smiley」や、動物の幸せを人や社会、自然とつなげる「QXL」という未来構想を提示。QIX は第二創業期を迎え、来場者と共に“調和のとれた発展と成長” を描いていくことを呼びかけました。
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新製品発表
土肥 朋子(株式会社QIX)



多様化するペットフード市場や情報過多の中で、飼い主の悩みが増えている現状を踏まえ、Smiley は「犬猫に食べる幸せを、飼い主にあげる喜びを」の想いを軸にリブランディングを実施しました。誕生から8 年にわたり悩める犬猫と飼い主に寄り添ってきた歩みとともに、動物病院での症例試用では高い嗜好性が確認され、現場での新たな可能性にも言及。新パッケージには信頼感を込め、このリブランディングを新たな出発点とし、現場に必要な選択肢として今後も進化を続けていく姿勢を示しました。
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記念講演➀
井坂 光宏(酪農学園大学)
枝村 一弥(日本大学)

獣医療は近年、AI の導入や医療機器の進化などにより大きな変化を遂げています。その一方で、大学における教育現場では、「臨床現場で本当に活きる力をどう育むか」という課題が浮き彫りになっています。
学生たちは国家試験合格を目標に学びを重ねますが、卒業後すぐに実践的な診療現場で力を発揮できるとは限りません。知識と実践の間に横たわるギャップをどう埋めるか、大学教育と卒後教育をどうつなげるか――。
本対談では、この根本的な問いをもとに、臨床の第一線で診療に携わりながら、教育現場で学生を指導するお二人が、①現場教育の課題、②大学の使命と評価軸、③学生との向き合い方、④卒後教育との連携、⑤臨床現場における新たな人材育成のあり方の5つの観点から意見が交わされました。

■ 臨床教育の現状と課題
枝村先生は、大学教育における「ジェネラル(一般診療)」と「専門教育」の両立の難しさを指摘しました。大学病院の高度化に伴い、教育内容が専門寄りになりがちで、学生が一次診療に触れる機会が減少しているといいます。そのため、一般診療の実践教育を担保する体制づくりが課題だと述べました。
井坂先生も同様に、酪農学園大学では「ジェネラリスト教育」を基本方針とし、一次診療から専門診療までを体験的に学べる環境整備を進めていると説明しました。地域の動物愛護施設との連携を通じ、学生が実際の診療に携わる機会を創出している点は、教育現場の新しい挑戦といえます。

■ 大学の使命と変化への対応
枝村先生は、大学には「教育」「診療」「研究」の三本柱があるとした上で、教育と高度医療を両立させる難しさに言及しました。特に、AI や新規医療技術の導入が進む中で、いかに現場の変化を教育へ還元していくかが今後の課題だと述べています。
井坂先生も、デジタル化や遠隔診療など、時代の変化をいち早く取り入れる柔軟さが教育者には求められると強調しました。
大学教育を社会の変化に適応させるためには、従来型の座学中心の学びから「実践的な体験教育」へシフトする必要があると語りました。

■「 現場で生きる力」を育むための教育工夫
井坂先生は、ヨーロッパ教育認証を取得したことを契機に、酪農学園大学では「参加型臨床実習」を大幅に導入し、学生が主体的に診療へ関わる仕組みを構築したと紹介しました。また、教員と学生が相互に評価し合う「双方向評価制度」を採用し、教育の質を継続的に高めている点も特徴です。
枝村先生は、「卒業初日から“先生” である」という自覚を持たせる教育を重視していると述べました。見学型実習から、採血や手術を含む実践的な技能試験へと移行し、社会に出て即戦力となる人材育成を目指しているといいます。
■ 教育の評価軸と人間性の育成
評価の難しさについて、井坂先生は「技術は数値化できるが、人間性は評価が難しい」と率直に語りました。同大学では105 項目に及ぶスキル基準「Day One Competences」を設け、卒業時に必要な基本技術を明確化していますが、対人能力の評価は今後の課題としています。
枝村先生も同意しつつ、「知識よりも飼い主との信頼関係を築く力こそが真の成長である」と述べました。成功体験を通じて自信を育み、患者や飼い主から“また先生にお願いしたい” と思われる存在へと導くことが教育の最終目標だと強調しました。

■ 学生の価値観の変化と教育者の対応
井坂先生は、学生の価値観が「Why 型」から「How-to 型」へ変化していると指摘。単なる方法論にとどまらず、「なぜそうするのか」を考えさせるような働きかけを意識していると語りました。
枝村先生は、コロナ禍による対面教育の減少が学生のコミュニケーション力や帰属意識に影響したと分析。現代の学生には「寄り添いながら褒めて育てる」指導が求められるとし、時代に即した教育スタイルへの転換の必要性を述べました。

■ 卒前・卒後教育の連携と、次世代を担う人材育成の在り方
井坂先生と枝村先生は、大学教育と現場教育を分けて考えるのではなく、相互に補完し合う「学びの循環」が必要だと語ります。
卒前教育では臨床現場を意識した実践的な学びを、卒後教育では大学や研究機関が持つ学術的な知見を現場に還元する仕組みを整えることで、双方の成長が促されます。
また、近年注目される愛玩動物看護師制度を含め、チーム医療の中で専門職同士が尊重し合い、より良い医療を提供できるような教育体系の構築が求められています。大学には、単なる知識伝達の場ではなく、獣医師・看護師双方のキャリア形成を支援する“ハブ” としての役割が期待されているのです。
井坂先生は「大学は“入口” でも“出口” でもある」と述べ、学生が社会に出た後も継続的に学べる環境づくりの重要性を強調しました。一方で枝村先生も、「教育は一方向ではなく、現場からのフィードバックが大学教育を進化させる」と指摘し、学びの循環こそが臨床教育の質を高める鍵であるとまとめました。
本対談を通じて明らかになったのは、大学教育の現場が今まさに「変革期」を迎えているということです。
獣医療の高度化やAI 技術の進展により、教育者にも柔軟な対応力と現場理解が求められています。その中で枝村先生と井坂先生は、「知識だけでなく、人と向き合う力を育む教育」の重要性を繰り返し強調しました。
大学は、学生にとっての「出発点」であると同時に、社会に出てからも学び続ける「帰る場所」でなければならない。両氏の言葉からは、そんな教育への熱意と使命感が伝わってきました。
臨床の第一線で日々動物と向き合いながら、次世代に「現場で生きる力」をどう受け渡していくのか――。その挑戦は、これからの獣医療界全体の未来を形づくる大きな一歩となるでしょう。
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講師紹介
井坂 光宏
酪農学園大学 獣医学類長
伴侶動物外科ユニット 教授
アジア獣医内科(循環器)設立専門医

酪農学園大学卒業後、酪農学園大学附属動物医療センター研修医を修了した後、北海道大学大学院医学研究科循環器外科にて博士(医学)課程修了。その後、アーカンソー子供病院小児心臓外科にて研究員、神奈川の民間動物病院での副院長を経て、現職に着任。臨床現場に根ざした実践的指導を重視し、次世代獣医師の育成に尽力している。
枝村 一弥
日本大学動物病院 病院長
日本大学 生物資源科学部 獣医学科 獣医外科学研究室 教授
日本小動物外科専門医、アジア獣医外科設立専門医

1999 年日本大学卒業後、2003 年に東京大学 大学院 農学生命科学研究科にて博士課程修了。日本大学生物資源科学部 助手および専任講師、米ミズーリ大学客員研究員として勤務。その後、日本大学生物資源科学部 准教授を経て、2021 年より同大学獣医外科学研究室 教授に着任。2024 年より、日本大学動物病院 病院長就任。運動器疾患の診断および治療だけでなく、教育に関しても国内外で活躍している。
記念講演➁
守口 徹(株式会社食機能探索研究所BABILON)
白畑 壮(プリモ動物病院 古淵/歯科・内視鏡センター)

オメガ3 脂肪酸は細胞膜の柔軟性を保ち、脳・神経・循環器など多方面で重要な役割を果たす必須脂肪酸ですが、現代の食環境では不足が指摘されています。
特にペットの食生活においては、ドライフード中心の食文化への変化や、オメガ6 脂肪酸過多の傾向により、オメガ3 の摂取量が著しく減少しているといわれます。
一方で、動物臨床研究では「基準値の確立」や「多様な犬種・猫種に対応したデータの不足」といった課題が存在し、実際の治療・栄養設計に十分反映されていない現状があります。
本講演では、こうした背景を踏まえ、ヒト領域で脂質栄養学を研究する守口氏と、獣医臨床の現場で多くの症例に携わる白畑先生のお二人が、①学術的治験から見たオメガ3 の有効性、②ペットフード設計の現状と課題、③QAL(Quality of Animal Life)向上への貢献可能性 の3 つの観点から議論が行われました。


■ 学術的知見から見たオメガ3 脂肪酸の働きと課題
守口氏は、オメガ3 脂肪酸を「最も柔軟な油」と表現し、細胞膜のしなやかさを保つうえで不可欠な成分であると説明しました。
「細胞膜が硬くなると、栄養素の取り込みや老廃物の排出が滞り、代謝全体に悪影響を及ぼす。オメガ3 はその柔軟性を保つ要となる」と述べ、健康維持の基盤に位置づけられると強調しました。
また、オメガ3 とオメガ6 の拮抗関係にも言及。「オメガ6 が過剰になると、オメガ3 の働きが阻害される。現代の食生活ではオメガ6 過多の傾向が顕著であり、これが慢性的なオメガ3 不足の一因になっている」と指摘しました。
一方、白畑先生は臨床現場での検証の難しさを指摘。「犬猫では、犬種や体格、食事内容による個体差が大きく、基準値を設定するには多角的なデータ収集が不可欠」と述べました。
その上で、「一次病院だけでの臨床検証には限界がある。今後は大学・研究機関・動物病院が連携し、より実践的なデータを蓄積していく必要がある」と、今後の研究体制の整備を提案しました。


■ ペットフードにおけるオメガ3 脂肪酸の変遷と設計上の留意点
守口氏は、50 年前と現在の食文化の変化を踏まえ、「かつては家庭の食卓に魚が並び、犬も自然にオメガ3 を摂取していたが、現代はドッグフード化の進行により摂取機会が著しく減少した」と説明しました。
実際に200 種類以上のフードを分析した結果、オメガ3 を十分に含む製品はほとんど存在しなかったとし、「現代のペットも人間と同様に慢性的なオメガ3 欠乏状態にある」と警鐘を鳴らしました。
白畑先生も、「20 ~ 30 年前までは、オメガ3 脂肪酸の重要性はほとんど考慮されていなかった」と述べつつ、近年のサプリメントや機能性フードの普及によって、飼い主の関心が高まっていると評価しました。
「成分表示を確認し、添加物を避け、オメガ3 含有量を重視する飼い主が増えている。これは大きな意識変化であり、業界の研究促進にもつながっている」と述べました。また守口氏は、製品設計上の要点として「オメガ3 とオメガ6 のバランスの最適化」を強調。
「オメガ6 を含む植物油は嗜好性を高めるため多くの製品に使われているが、それが過剰になるとオメガ3 の働きを妨げてしまう。どの油をどの程度配合するかを設計段階から意識すべき」と述べました。

■ オメガ3 脂肪酸がもたらすQAL 向上の可能性
守口氏は、オメガ3 摂取による変化として「被毛の艶やフケの減少」「筋肉の萎縮予防」「涙の分泌機能改善」など、実験データおよび臨床観察の両面から効果を報告しました。
特に「オメガ3 は脳機能の維持・回復を助ける」点を最大の強みとして挙げ、早期からの継続的摂取が重要であると強調しました。
白畑先生も、高齢犬の認知機能低下への効果事例を紹介。「DHA サプリメントを与えたところ、数か月で徘徊や夜鳴きの頻度が減少し、飼い主の生活の質も向上した」と述べ、QAL 向上の可能性を実感したと語りました。
さらに両氏は、今後の応用展開として「犬種・疾病ごとのパーソナライズ栄養設計」「高濃度・高嗜好性のサプリメント開発」などを提案。
「早期からの適切な摂取が寿命延伸にも寄与する可能性がある」と、動物のウェルビーイングにおけるオメガ3 の価値を再認識する意見が示されました。
本講演を通じ、オメガ3 脂肪酸は単なる栄養素ではなく、「生命機能を支える基盤成分」であることが改めて示されました。
細胞膜、神経、筋肉、被毛、認知機能――そのすべてに関わるオメガ3 の働きは、動物たちの健康とQAL の向上に直結します。
一方で、動物医療分野においては、依然として臨床データや基準値が不足しており、今後の学術的蓄積と実践的応用が求められます。
研究者と獣医師、そして飼い主が一体となり、オメガ3 を正しく理解し、日常の食生活に取り入れていくこと。それこそが動物たちの豊かな未来を支える鍵であるといえるでしょう。
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講師紹介
守口 徹
株式会社食機能探索研究所BABILON 代表取締役
麻布大学名誉教授
日本脂質栄養学会理事長

麻布大学 生命・環境科学部教授として2008 ~ 2024 年に脂質栄養を研究後、同年4 月に大学発ベンチャー株式会社「食機能探索研究所BABILON」を設立し、代表取締役に就任。オメガ3脂肪酸の第一人者で日本脂質栄養学会理事長も務める。
白畑 壮
プリモ動物病院 古淵 / 歯科・内視鏡センター 院長
日本小動物歯科研究会 歯科認定レベル全課程修了
獣医師、博士(獣医学)

麻布大学獣医学部卒。歯科認定医としてスケーリングや、外科手術を多数行い、国内外で講演も実施。現在は院長として歯科医療の向上と後進の育成に力を注いでいる。
記念講演➂
山川 伊津子(ヤマザキ動物看護専門職短期大学)
牛島 加代(非営利型一般社団法人HugKu-Me)
生田目 康道(株式会社QIX)

本講演では、動物医療の専門家と福祉・教育の現場で活動されるお二方を迎え、動物医療の枠を超えた教育・福祉との連携や、その可能性について議論が行われました。QIX 代表取締役社長・生田目が進行役としてモデレーターを務め、現場での実践や課題、今後の展望についてお話を伺いました。

■ 動物医療が“社会” と交わる時代へ
冒頭、生田目は次のように語りかけました。
「動物医療だけでなく、ペット産業全体が教育・福祉とどのように関わり、可能性を広げていけるかを考えたい。」
QIX では、発達特性を持つ子どもたちの学習・就労支援に加え、保護者に正しい情報を届けるメディア「すばるコレクト」の運営を行うなど、動物を軸とした教育・福祉への貢献を進めています。
こうした背景のもと、生田目は「動物医療と他分野の垣根がどのように変化しているのか」「その融合により何が見えてくるのか」という問いを登壇者に投げかけました。

■ 動物看護教育に芽生えた“福祉の視点”
山川先生はまず、動物看護教育の変化について紹介しました。
2019 年の愛玩動物看護師法の制定により、動物看護師は国家資格化され、教育カリキュラムには新たに「人間の福祉と愛玩動物の関わり」が加えられました。
「これは現場で福祉との連携が求められている証拠です。学生たちに“人と動物の関係” を体系的に教えられることは大きな進歩だと感じています。」一方で、現場には新たな課題も生まれています。
高齢者の入院や介護に伴う飼育困難、多頭飼育崩壊など、動物と人の福祉が複雑に絡み合う問題が増加しており、山川先生は「動物関連者だけでなく、福祉の専門職との連携が不可欠です」と強調しました。
環境省が2021 年に公表した「多頭飼育対策ガイドライン」でも、厚生労働省との連携が明記されるなど、国としても動物と福祉の協働を推進する流れが見られます。
また、山川先生は「愛玩動物看護師は動物の看護だけでなく、人への支援を担う存在でもある」と指摘します。
「飼い主さまの変化に気づいたとき、福祉機関へつなぐ判断ができる。そうした“気づきと行動” ができる専門職を育てたい」と語られました。
さらに、「人が苦手で動物が好きだからこの道に進んだ」という学生も少なくない中で、対人援助職としての自覚を育む教育の重要性にも言及されました。


■ “動物を通じて人を支える” 現場の力
牛島氏は、自身が行っている福祉現場での活動について紹介しました。
児童養護施設で開催している「動物愛護教室」では、虐待や家庭環境の問題で心に傷を抱える子どもたちに、犬との触れ合いの時間を提供しています。
「普段はルールを守れない子どもたちが、犬が怖がらないように一列に並び、優しく接する姿を見せてくれました。先生が『こんな表情は初めて見た』と涙を流されたことが今でも印象に残っています。」
この体験を通じ、牛島氏は“動物が持つ福祉的な力” を強く実感したと語ります。
「人の福祉だけでは解決できなかった社会課題も、動物を介することで優しさや共感が生まれ、前に進むことができる。動物と福祉の連携には、社会を変える力があると思っています。」
また、近年は子どもたちの動物との接点が減少している現状にも警鐘を鳴らします。
「学校での飼育動物が減り、犬や猫を触ったことのない子どもが増えています。ペットを飼うことが目的ではなく、“命と触れ合う体験” を教育に取り入れることが大切です。動物の専門家が正しい知識を伝える機会をもっと増やすべきだと考えています。」
彼女の言葉には、地域・教育・ペット業界をつなぐ実践者としての強い使命感が感じられました。

■ “専門職の垣根” を越えた人材育成へ
対談の最後に、生田目は次世代を担う若者へのメッセージを尋ねました。
山川先生は「専門性を深めることはもちろん、社会で起きている課題に関心を持ち、福祉や心理など他分野にもアンテナを張ってほしい」と語りました。
一方で牛島氏は「動物のプロこそ、人の福祉や教育に関わる役割を担える存在です。優しさを広げる活動を通して、子どもたちや地域を支えてほしい」と呼びかけました。
動物医療の現場が、単なる治療の場から「社会と人を支える拠点」へと変化していく時代。
動物と人との関係を軸に、教育・福祉・地域が手を取り合う――その融合の先に、“次世代の動物医療” の新たな姿が見えてくるのかもしれません。
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講師紹介
山川 伊津子
ヤマザキ動物看護専門職短期大学 学長
動物トータルケア学科教授
博士(学術)・社会福祉士・精神保健福祉士

長年にわたり動物看護教育に携わり、臨床現場と教育現場の架け橋として人材育成に尽力。動物を介在させた人の福祉とそれに伴う問題をVeterinary Social Work の視点から教育・研究し、小学校や高齢者施設で活動を実施している。
牛島 加代
非営利型一般社団法人HugKu-Me 理事長

2007年に千葉県でサロンを開業後、保護犬猫のトリミングや譲渡促進に尽力。2022 年に立ち上げた「HugKu-Me(はぐくみ)」を通じ、地域社会と連携した複合的な福祉モデルを推進している。
生田目 康道
株式会社QIX 代表取締役社長

日本大学生物資源科学部獣医学科卒業後、動物病院の経営を経て、ペティエンスメディカル(現QIX)を設立。Quality of Animal Life(QAL)の概念を提唱し、ペットと人の幸せな共生を目指した事業を展開している。
記念講演➃
菊地 良太(ミニイク株式会社)
深田 篤(株式会社PetVoice)
生田目 康道(株式会社QIX)

本講演では、異業種から動物医療の領域へ参入し、新たな視点とテクノロジーで変革を進める二人の起業家が登壇しました。
QIX 代表取締役社長・生田目が進行役としてモデレーターを務め、現場で顕在化している課題や、デジタル化・人材・医療連携の可能性、そして今後の動物医療に求められる力についてお話を伺いました。

■ 現場の課題とデジタル化の遅れ
冒頭、生田目は次のように語りました。
「お二人とも獣医師でも動物業界出身でもなく、異業種から参入された企業家です。だからこそ、外からの視点で見えている課題やチャンスを伺いながら、今後の動物医療のあり方を考えていきたい」
提示されたテーマは、「動物医療における構造的課題と、それを解決するためのデジタル・経営・人材の視点」です。
現場では医療の高度化やグループ化が進む一方で、依然としてデジタル化の遅れや人材確保・育成の難しさが存在します。こうした課題をどのように乗り越え、より持続的で働きやすい動物医療の仕組みをつくっていく--それがディスカッションの出発点となりました。

■ IT と人材改革が動物病院経営の鍵に
菊地氏はまず、動物医療業界の課題を「IT」と「人材」の2 つの軸で指摘しました。
「他業界と比べても、動物医療のデジタル化は非常に遅れています。現場の知恵と経験で日々を支えている一方で、それが再現性や持続性を欠く要因にもなっています」と語ります。
さらに、専門人材の需給バランスが崩れつつある現状を挙げ、「人材の働きがいと成長を支える仕組みづくりが急務です」と強調しました。保育業界の例を引き合いに出し、「かつて保育士の離職や低収益に悩んでいた保育業界が、IT 導入とマネジメント改革で“選ばれる園” に変わったように、動物病院も仕組み化とデジタル活用で転換できます」と述べました。
生田目の「病院側がDIY 的にすべてを自力で抱え込む現状をどう変えられるか」という問いに対しても、菊地氏は次のように答えました。
「IT 投資の効果を得るには、ツールを“使いこなす” 視点が欠かせません。電子カルテを導入するだけでなく、そこに蓄積されたデータを経営判断に活かし、業務改善サイクルを回すこと。これが真のDX です」
人材面については、マネジメントの質そのものを問います。
「獣医師や動物看護師を“リソース” ではなく“価値創造の主体” として扱うべきです。その人が何を実現したいのかを理解し、適材適所で配置・評価する。これが病院の持続的成長を支える鍵だと考えています」
最後に菊地氏は、「IT システムはあくまで経営システムを支える一手段です。経営と組織の仕組み化を伴わないデジタル化は、真の変革にはなりません」と締めくくりました。


■ 変化する働き方と医療の新しい連携
続いて深田氏は、近年の動物病院業界が抱える「働き方の変化」と「経営分離の課題」を指摘しました。
「グループ病院化や企業経営化が進む中で、かつてのように院長が24 時間診療に関わるスタイルは難しくなっています。夜中に入院動物を見に行く、といった姿勢は尊い一方で、組織としては持続不可能です。今は“チームとして診る” 仕組みが求められています」
また、医療の高度化に伴いスタッフが増加する中で、臨床と経営の分離が進まないことを大きな課題としました。
「院長が経営も診療も担う状態では、組織の成長に限界があります。医療の質と働く環境の両立には、経営力の強化が欠かせません」
その上で、自社のペットボイスが果たす役割についても語りました。
「首輪型デバイスを活用することで、入院動物や在宅動物の状態を24 時間モニタリングできます。飼い主が自宅でデータを確認し、その情報を動物病院と共有できます。担当医が家に帰っても、スマホでデータを見て“呼吸が安定している”と安心できる。これは医療従事者の心の支えにもなります」
さらに、データ連携の将来性にも触れました。
「複数病院でのデータ共有も可能です。診療連携の基盤としても活用できると考えています」
この流れを受け、菊地氏が「カルテデータをAI 解析し、診療のヒントとして還元する仕組みづくりを進めたい」と応じたことで、両者のテクノロジーが相互補完的に機能する未来像が浮かび上がりました。

■ 挑戦と知恵が紡ぐ、動物医療の進化
今回の対談を通じて浮かび上がったのは、「デジタル」と「人」の両軸から動物医療を再構築する必要性です。デジタル化はあくまで“仕組みを支える道具” であり、そこに働く人々の想いや価値観をどう生かすかが成否を分けます。
菊地氏の語る経営とマネジメントの仕組み化、深田氏の提案するデータ活用による医療の持続性と安心の提供。これらは単なる技術論ではなく、「動物医療を支える人々が幸せに働ける環境をどう作るか」という共通のテーマに集約されていました。
生田目はセッションを次のように締めくくりました。
「テクノロジーも経営も、人がより良く動物と向き合うための手段です。挑戦と知恵が交差するこの対話が、動物医療の未来を創る第一歩になればと思います」
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講師紹介
菊地 良太
ミニイク株式会社 代表取締役CEO

ミニイクの共同代表およびCEOとして、動物病院向けのオールインワンカルテの開発・提供やコンサルティングサービス等を展開。IT 企業、コンサルティングファーム、動物病院経営と幅広い経験を元に、動物医療のデジタルトランスフォーメーションと経営改革を推進している。
深田 篤
株式会社PetVoice 代表取締役CEO

横浜国立大学経営学部卒業後、外資経営コンサルティング会社勤務を経て、犬猫向け首輪型健康管理デバイスを開発提供する株式会社PetVoice を創業。犬猫の寿命を10 年延ばすを掲げ、呼吸数・心拍数・推定直腸温が計測可能なデバイスを獣医療との連携を重視しながら展開している。
会場中央には、約300 点のQIX 全製品を一面に展示。
「これ欲しい」「これ使ってみたい」と新たな発見につながる提案を行いました。

QIX プロモーションエリアでは、「スキンケア」「フード」「クリッパー」「サイエンス」
の4 つのエリアに分かれ、製品のこだわりと魅力を体感いただきました。

QIX で多く展開しているスキンケア製品やシャンプー製品の香り、質感、使用感を体験。保湿製品の体験は特に喜ばれていました。また、スピードトリミング・髙木美樹監修のTQ シリーズも並び、そのこだわりをお試しいただきました。



リブランディングを果たしたフードブランド・Smiley を中心に、フードの溶解性実験や香りの比較、味当てクイズなど、その美味しさと安全性を五感で体験していただきました。さらに会場限定価格での販売や、様々なプレゼントなど、ペットオーナー様に喜んでいただける企画が満載でした。



動物病院やトリミングサロンの現場でご愛顧いただいている、Joyzzeのクリッパーを使っての毛刈り体験や、普段から注意しておきたいメンテナンス方法もレクチャー等も行いました。普段はなかなか試すことのできないペットオーナー様にも体験いただき、その品質の高さを実感いただきました。



動物病院専売のサプリメントやトリーツ、耳ケア製品から介護用製品まで、様々な製品を他製品と比較しながら特長や効果を体験していただきました。「だから選ばれる」そのこだわりを試すことができる貴重なエリアとなりました。



出展エリアでは、動物医療の未来を担う7 社の企業様がブースを構え、
それぞれの魅力あふれる商品やサービスをご紹介いただきました。














当日イベントにご参加いただいた皆様の声をご紹介します。
すべての記念講演を通し、今回のイベントテーマに掲げられていた動物・医療・人・福祉・食・Tec を実感でき、大変多くのことを勉強させていただきました。貴重な機会をありがとうございました。(ペットオーナー)
ブースでは丁寧にお話が聞けたので良かったです。特別講演では普段の仕事や生活では感じられない福祉の繋がり等、動物業界で働いている自分の仕事の可能性が広がった気がしました。お土産も豪華で大満足です!(動物病院スタッフ)
動物の健康と食に対する分野はもちろん、福祉との連携も興味深く、もっと講演も聞いていたかったほどです。サンプルや抽選会も楽しませていただきました。(ペット関連企業)
非常に活気のあるイベントで、企業としてのパワーを感じました。(大学関係者)
実際の製品の使用感や情報を知ることができたので大変参考になりました。(トリマー)
QIX の商品をより知ることができました。理解を深めたことで飼い主様への説明も説得力を増してできそうです。
いろいろな方と交流することもでき、大満足です。(愛玩動物看護師)
知らなかった製品を実際に手に取って見ることができたので、スタッフ同士で「病院で使えるね」と話ができたのがとても良かったです。(獣医師)
創業から15年。QIXは「ペットと飼い主様の生活をもっと豊かで快適にする」という理念のもと、
動物医療とペットライフの発展に向けて歩み続けてきました。
動物病院専用製品の開発をはじめ、獣医師や動物看護師、トリマーの教育支援、
ペットオーナーへの啓発活動など、私たちの挑戦はいつも“現場の声”とともにありました。
この15年という節目を迎えられたのは、支えてくださったすべての方々のおかげです。
ともに悩み、考え、挑み続けてくださった動物医療関係者の皆さま、
そしてペットと暮らすすべてのご家族に、心より感謝申し上げます。
2009年
11月
神奈川県横浜市にて「株式会社ペティエンスメディカル」を設立
動物病院用ブランド「Petience」製品 取扱開始
2013年
1月
ホームケアブランド「Parasol ヘルスケア」製品 取扱開始
7月
本社を神奈川県相模原市から東京都町田市へ移転
2014年
3月
競走馬・乗用馬用健康サポートブランド「Petience horse」製品 取扱開始
2015年
1月
スキンケアブランド「AFLOAT DOG」製品 取扱開始
2月
セミナー事業 運営開始
2017年
11月
犬用おやつブランド「CLIMBING」製品 取扱開始
2019年
4月
社名を「株式会社ペティエンスメディカル」より「株式会社QIX」へ変更
2020年
3月
事業拡大に伴い、東京都町田市中町に本社を移転
2021年
3月
株式会社ベネッセコーポレーションと業務提携
11月
株式会社TALL TREE.と業務提携し、トリミングサロン「QTREE.」をオープン
2022年
4月
セミナー撮影・配信スタジオ「Q's Studio」を東京都町田市原町田に開設
5月
日本ペットフード株式会社と業務提携
2023年
2月
事業拡大に伴い、東京都町田市森野に本社を移転
3月
株式会社Biペットランドと業務提携
8月
一般社団法人労働環境改善協会(WEIA)と業務提携
9月
コードレスタイプクリッパー「Joyzze」取扱開始
10月
動物病院の経営・運営支援サイト「QIX BIZ Studio」を開設
動物病院専用ハラスメント対策サービス「guard+」開始
獣医師・愛玩動物看護師専用事業者賠償補償「protect+」開始
2024年
1月
4月
動物病院専用ブランド「PE」ロゴリニューアル
11月
創業15周年を迎える
2025年
6月
国産ペットフード「Smiley」製品取扱開始











